デュッセルドルフにて開催された日独経済シンポジウム「水素経済と未来に向けたビジネスモデル」に参加しました。本シンポジウムでは、水素社会の実現に向けた日独両国の最新の取り組みと課題が共有され、活発な意見交換が行われました。
 現在、水素エネルギーの商業化に向けた最大の障壁は、依然として高コストとインフラ整備の遅れにあります。供給側・需要側双方における経済的なインセンティブの不均衡や、サプライチェーン全体の最適化の難しさも、現実的な課題として認識されています。こうしたなか、日独両国がそれぞれの強みを活かしつつ、補完的なパートナーシップを構築することの重要性が改めて確認されました。日本企業の製造技術と、ドイツおよび欧州域内における需要創出・消費サイドの知見を結びつけることで、持続可能な水素社会の基盤が形成されることが期待されます。

シンポジウムの様子

また、今後の展望として特に強調されたのは、社会全体が「どのような水素社会を実現したいのか」という明確なビジョンを共有し、その実現に向けて上流から下流まで一体となって取り組むエコシステムの構築の必要性です。そのためには、官民の連携はもちろん、常にポジティブなメッセージを発信し続けることができるプレイヤーの存在が不可欠です。
その役割を担うのは、大企業に限られません。むしろ、水素市場に新たな視点とスピードをもたらすスタートアップの存在が、今後ますます注目されるべきでしょう。EU域内の法的枠組みによる強力な規制誘導のもと、水素需要が着実に促進されるなかで、ベルリンのようにスタートアップ・エコシステムが発達した都市が果たす役割は、今後ますます重要性を増していくものと考えられます。

(小田崇寛)